虚空の明星 黎明 73 大道修
卓也が立ち止まった。緑の中に少しだけ黒いものが見える。それは穴の口であった。かなりな口径と思われるが、長い草で覆われていて少ししか見えない。
「梅木さーんッ、梅木さーんッ」卓也が身を低めて大声で叫ぶ。
「オーッ、いるぞーッ」梅木の声だ。
よかった。私は胸をなで下ろして叫んだ。
「怪我はないかーッ」
「わからないーツ、下が柔らかくてズボッと入ってしまってるんだーッ」
かすれ気味だが、梅木の声はよく聞こえてくる。穴はそんなに深くはないだろう。でも、5 , 6メートルはありそうである。
下が柔らかくて助かったと考えられる。
「タクッ、ロープば出せや。早よ、助けんと」
義行が卓也に言う。ハイと答えて卓也はリックを開けた。山に入るときは常備しているのだろう。結構、太めのロープで巻きも充分である。
「ライトば括りつけろ。点灯して下ろすんだ」
義行が言う。卓也が持ち手の付いた大型のライトを出してロープに括りつけて下ろす。
「ライトばはすしたら先にリックば括りつけろーッ、その後で上げるーッ、体重は何キロだーッ」
義行は穴に身を乗り出して大声で叫ぶ。
「65キロでーす」梅木の返事。
「結構あるな。コリャ、ヤバいど。クソーッ、ロープは充分長いけん。樹でもアリャのーッ、括りつけて楽勝なんじゃが。大道さん。その辺、掘ってみてくんない。根っ子かなんかないか?」
私は卓也が出したスコップで辺りを探った。利奈も草をむしりながら手で探している。
「なんか、根っ子あるよ」利奈が言う。
私は慌てて飛んでいきスコップで掘った。
「オ、なんだか知らんが結構太いな」
私はスコップで根っ子が裸になるまで掘り起こした。手で強度を確認する。ビクともしない。
「ヨシ、これをロープで縛ってオレの体と繋ぐ。最後の支えになるから、あんたら3人で上げてくれ。一発勝負だぞ」
私がそう言った時、梅木のリックが上がってきた。泥にまみれ汚れきっている。
「ダメだーッ、穴がフラスコ状になっている。私は完全に宙吊り状態になる。手も足も使えないーッ」
ライトで照らして見たんだろう。梅木の悲鳴が聞こえた。
「ええから、そっちはなんも考えんな。必ず上げるからなーッ、ロープで体を厳重に縛るんだ。長さはタップリあるからなーッ」卓也は叫んで、穴の中に再度ロープを投げた。
私は根っ子に巻いたロープをそのまま自分の胴に繋いだ。
梅木の体重は65キロ。服や靴や付いた泥なんかで、4,5キロは増えるとしておよそ70キロを上げなければならない。下は柔らかい上に草と来ている。滑るにきまっている。力は半減するかもしれない。でも、なんとか上げられるだろう。4人もいるんだ。利奈は女とはいえ剛力の持ち主である。男と変わらない、頼りになる。
「縛ったぞーッ、上げてくれーッ」
梅木の声がした。彼はワンゲルでならした男だ。ロープの縛り方は心得ている。ロープが途中でほどけることはない。要は、上げられるかどうかの、二つに一つの勝負になってくる。
「よし、引けーッ」義行の合図で、皆が一斉に力を出した。ロープがピーンと張った。ズブズブと穴の縁へ食い込んでいく。でも、徐々に上がってはいる。が、重い。足を踏ん張れないから重い。
「クソーッ、ヤバいぞ、穴が崩れている。もっと下がれ、飲み込まれるぞーッ」
先頭で引っ張っている卓也が喚いた。
続く
网址:虚空の明星 黎明 73 大道修 https://m.mxgxt.com/news/view/1973296
相关内容
虚空の明星 黎明 67 大道修虚空の明星 黎明 66 大道修
心理学部のカリキュラム概要|明星大学心理学部オリジナルサイト
明星大学のビジョン・教育目標
「明星 NEO油そば 己巳 (つちのとみ) 監修トリュフ香る鶏油 (チーユ) そば」(5月19日発売)
明星の教育|教育の特色|明星小学校
「明けの明星」:イザヤ書と黙示録における解釈の違いとその真意
5月お誕生日の明星さん(その5)
明星の「凝念教育」
明星学園高等学校出身の有名人27人―有名人の出身高校ランキング
